産めるものなら産みたかった 5
電話を切ったあと、私は声をあげて泣いた。
そしてこみ上げてきた気持ち…
産めるものなら産みたかった。
妊娠したかもしれないと思ったとき、私はとても動揺した。
次男のあとの三回の流産、その後不育症の治療をして7年越しに娘を出産。
もうこれが最後の妊娠出産だと決めていたのだ。
だから、まさか妊娠するなんて。
まさかの4人兄妹になるかもしれない。
しかも長男はADHD、次男もグレーっぽい。
年齢的にも、経済的にも不安はある。
夫は受け入れてくれるだろうか。
なによりも、この子は育つのだろうか…
正直、どちらも選べない自分がいた。
それから夫と話し合い、産むと決めて病院へ行ったのだが…結局流産してしまった。
心のどこかで予想はしていた。
でもやっぱり悲しくて泣いた。
産むことに不安はあったが…流産したことで、ホッとはしなかった。
ただただ、この事実を淡々と受け入れている自分もいた。
だから、電話を切ってから湧き上がってきたこの気持ちは、きっと無意識に心の奥に仕舞い込んでしまった気持ちだったのだろう。
産めるものなら産みたかった…
湧き上がってくるこの気持ちをそのまま解放しよう
そう思って、あえて声に出して呟いた。
産めるものなら産みたかった
産めるものなら産みたかった…
人間の脳は不思議だ。
音として聞いたことばは、ただ心で思うよりも深く深く響いてくる。
何度も何度も呟いた言葉は、私の本当の気持ちを認めて癒していった。
ごめんね、今までちゃんと認められなくて。
本当はあなたのこと、産みたかったよ。
その気持ちに蓋をして自分を傷つけていた、そのことに気づかせてくれてありがとう。
もう大丈夫、大好きだよ。
あと少しだけ、あなたと一緒にいようね。